組織の譲れない価値観の作り方
多様性のマネジメントは大変難しいもので、究極的には相容れない価値観もあります。だから私は、逆説的かもしれませんが、何でもかんでも「多様性」= 「善」とはせずに、「この価値観は絶対に譲れない」≒「多様性を認めない」という領域をはっきりさせることが、最もシンプルでベーシックな解決策ではない かと思います。
つい先日ダイバーシティの記事を上げたばかりで、別の切り口でダイバーシティについて記事が上がっていたので、この記事について思うところを書いていきたいと思います。“この価値観は絶対に譲れないものを作る”ということは、水戸黄門で言う“印籠”を作るようなものです。(ヒカエオロウってヤツですね)要するに(その会社において)何よりも尊ばれるものを作ることになります。
絶対に譲れない価値観は簡単に決めると痛い目にあう
記事の中では、「時間厳守」や「美しい言葉を使う」といった、例としてはあまり相応しくないような例が使われているように思えます。なぜなら、本当にそれを印籠として良いのか?というところが抜けている印象を受けるからです。(まあ、まだ美しい言葉を使う、はありかもですが。)
この印籠、水戸黄門では水戸光圀しか持ち得ないものですが、企業においての印籠は、全ての従業員が持ち得るものになります。かつてネオキャリアの社長が出された「社長よりも偉いもの」という著書でも言われていることですが、たとえそれが一アルバイトであっても、それを社長が反故するようなことがあれば指摘ができるわけです。
ただ、多くの場合、社長や上司が譲れない価値観を反故していても指摘はできないでしょう。するとどうなるか。従業員がその“譲れないと定めたはずの価値観”を反故し始めます。別に対して譲れないわけではないのでしょう、と。そうすると譲れないと定めていたはずの価値観は完全に崩壊します。
組織のトップがそれを体現する最大の存在にならなくてはならない
さて、それではどのように定めなければならないのでしょうか。“譲れない”と言うくらいなのですから、本当にそれがどんなことがあっても“譲らない”価値観である必要があるわけです。例えば、時間厳守、という価値観は、通勤途中で困っている人を見つけて助けてあげようにも、時間厳守というものを優先して通勤しろ、というようなものですね。本当にそれが“譲れない価値観”になり得るか?そう考えると「?」と思わざるを得ません。価値観というものは、時と場合によって優先するものが変わるでしょう。そういった中で、不変の価値観を作る、というのは結構難しいものです。
また、その設定のためには組織のトップが最も体現する存在にならなくては絶対に成り立ちません。そこから始まって、マネジメントや人事制度といった細部にまでその価値観を広げていく、といった作業が必要になります。譲れない価値観を作ろうと、口で言うほど簡単なことではないですし、軽い気持ちで作ると従業員の反発を招く方法であることは覚えておいた方が良いところかと思います。
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