クラウドソーシング(業務委託)の課題
ランサーズやクラウドワークスといった“クラウドソーシング”と呼ばれる業界が流行り始めて久しいですね。そのようなサービスを通じて会社には属さず食べていく、という人も少しずつ出てきているようですが、その数はまだまだ少ないよう。それもそのはずで、それらのサイトを見てみると、圧倒的に単価が安いものばかり。これはほぼ“内職”に近いものと言っても過言ではありません。もちろん、“内職”レベルの仕事であればその単価でも仕方がないとは思いますが、そうではない依頼さえもあまりに低単価で提示されている現状があります。
丸投げ業務が単純作業の業務に近しい単価で扱われる
基本的に日本人は“クラウドソーシング(もっと分かりやすい言葉でいえば業務委託)”ということが非常に苦手のように思う。“業務委託”というのはその言葉の通り、“特定の業務を他に委託すること”という非常に単純に見えることなのですが、発注側も、受注側もあまりよく分からないまま契約が取り交わされているというのが現状のように思います。なぜ、そのような状態で契約がされているかと言うと、まずは“業務を特定する”ということができていないケースが非常に多くあります。
“業務を特定する”ということができていないと申し上げましたが、もしかすると発注側は“できている”と思っている可能性はあります。例えば、ウェブサイトを制作してくれというような依頼で、“ウェブサイトを制作する”という業務は特定しているじゃないか、というような例です。確かに、ウェブサイトを制作するという事実だけは分かりますが、素材が全て揃っていてそれらを並べてコーディングするだけの話なのか、それともウェブサイト自体の案から考えなくてはならないのかによってもその単価は確実に変わってくるはずなのですが、どちらにしても単価がそれほど変わらないという事態が起こっています。
自分の部下に対して指示するのと同じように依頼している
当然ですが、先の例で言えば、後者の単価を上げなければ受託者側も受ける理由がないはずです。ところが、受託側も仕事に困っているのか、供給側が過多なのか、低い金額で受けてしまうというような事実が積み重なっているようです。このような状況がなまじ続いてしまっているからこそ、「クラウドソーシングは安い」というような変なイメージだけ付いてしまい、単価のおかしい依頼がたくさんあるような状況を作っているように思えてなりません。
勘違いいただきたくないのは、全ての単価を上げろということではないということです。本当に作業を単純化し、誰でもできるような仕事であれば単価は低くなってしまうことは仕方がないことだとは思います。ところが、発注側がそのような努力をすることなく、丸投げに近い形で安い単価で仕事を出していること自体がおかしい話になっているということです。ただ、そのような仕事の依頼の仕方をしてしまう理由も分かります。恐らくそれは、自分の部下に対してそのような指示の出し方で仕事を依頼しているからに他ならないでしょう。
クラウドソーシングの活用もマネジメントスキルの一つに
ご自身の部下であれば、日頃からコミュニケーションを取っているでしょうし、リカバリーショットも打ちやすいでしょう。それに、どんな追加の依頼が出てきたとしても、部下(サラリーマン)である以上、その指示に従わないという選択肢はその部下にはありません。要するに、それほどしっかり考えずに指示を出して、出てきたものをダメ出ししてやれば良いという感覚があるのだと思います。これと同じ感覚で業務委託する結果が今回のような事態を引き起こしているそもそもの原因になっているような気がしてなりません。
これからの時代、恐らくもっと“クラウドソーシング”という分野は発展していくように思えます。自分たちの範囲内にはないリソースをいかに外部から調達し、自分たちの目的を達成するかという考え方は、不安定な時代にこそ有用になっていくからです(それを社員として迎えれば固定負債のような形になってしまいますから)。今は多くの人が分かっていないと申し上げましたが、そこを上手く使っていくことができるかどうかというのも、今後のマネジメントスキルの一つになるのではないかと強く感じます。
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