ダイバーシティ問題を解決する方法とその副作用
女性の社会進出をダイバーシティと呼んでいるきらいのある日本ですが、本来のダイバーシティの意味はもっと広いということはご存知かと思います。ダイバーシティの意味合いがどうか、という議論は一旦置いておいて、なぜ、日本という国はダイバーシティが進まないのでしょうか。もっと言えば、ダイバーシティが進まない=グローバル化が進んでいないということでもあり、その原因を認識しておくことは非常に重要なのではないでしょうか。今回は別に女性進出云々の話をしたいわけではないのですが、恐らく女性進出という話に置き換えた方が分かりやすいかと思うので、便宜的に女性の社会進出という話に沿って話したいと思います。
今の仕事のやり方に支障がないように環境整備することが正解なのか
まず、現状の認識を合わせたいと思うのですが、女性の社会進出が全くない社会か、というとそうではないでしょう。ゼロであるとはもちろん言えませんが、多くの採用の場面において性差によって差別されることは少ない社会であるように思えます。議論のポイントとなっているのが、出産後の社会復帰という側面。その際に“働き方の多様性”を認めるべきだ、という話が発端になっている、と。ただ、時短であったり、在宅で働くことのできる制度等、一部の企業で導入が進んでいるところはあるものの、その導入が進んでいなかったり、制度があっても活用されなかったり、また、使っている人を快く思っていない環境があったりする、という感じでしょうか。
ここに対して政府の出している政策が、子育て環境の改善。これの意味合いは、「できるだけ仕事に支障がないような環境を整えるから、女性を受け入れてください。」というもので、今の正社員の置かれているフルタイムで働く、ということを推し進めていることとイコールであり、ダイバーシティを受け入れていくという意味では全く的外れな話なわけです。(フルタイムで全員働け、という方向性の解であるなら正しい解ではあります)では、ダイバーシティを受け入れていく、という意味合いでの解はどうすべきなのでしょうか。
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性差はもとより、人種、働き方を問わず、業務が回る仕組みを作る
いかがでしょうか。この解に対してのヒントは、以前のブログで挙げた厚切りジェイソンさんの記事にあります。業務の仕組み化というのが端的な結論です。こう言うと「うちは業務の仕組み化はできているよ」と言われそうなので補足すると、業務の仕組み化の定義が違うのだと思います。多くの会社の場合、業務の仕組み化の定義は、(日本人でフルタイムワーカーが会社に出社することが前提で)回る業務の仕組みなのでしょう。
私の定義は、上記の前提がなくとも業務が回る仕組みを指しています。つまり、性差はもとより、人種、働き方を問わず、業務が回る仕組みですね。「そんなことは絵空事」と言われそうですが、それを実現してきた方法が先に挙げた記事にヒントがあるわけです。例えば、過度なカスタマイズを自社のシステムで行わないというものは、自社の業務という意味で言えば最適化されているものの、新しく入ってくる人のことを考えれば、たとえ元となるシステムを使ったことがあったとしても、一から覚えなくてはならない環境があるわけです。(ここに業務の非効率性が日本企業にはあるわけですね)
フルタイムで働く必要がなくなる時代が来る。つまり、正社員はいらない。
このように考えると、ダイバーシティを受け入れられる企業=人材の流動性に耐えられる企業と言うことができるのではないでしょうか。仮にそのような方向で物事が進むとすると、浮かんでくることがあります。それは、正社員という制度の崩壊です。ご存知の通り、日本の正社員は過度に守られています。それは先にお話した、フルタイムで出社する、ということとのトレードオフなのだと思います。
そのフルタイムで出社する、ということが必要なくなったとすると、企業が正社員を採る必要性は益々なくなるでしょう。一人ひとりがプロフェッショナルとして、複数の会社にプロジェクトベースで参加するようになる、というような未来を予想していた記事を見たことがあります。そのような未来に、今の状態ではならないように思えますが、ダイバーシティを受け入れることは、今の正社員の制度とのトレードオフとなると、反発は必至なのではないでしょうか。
ただ、グローバル化は待ってくれません。ダイバーシティに対応すること、これはグローバル化には必須事項だと、私は断言します。
p.s.
今の日本において“ダイバーシティ”という言葉が“女性の社会進出”という意味で使われやすいのは、働き方の多様性という側面にフォーカスしているからですね。
本来的には男性にだって当てはまるはずですし、もっと言えば外国人の方々も含めての話になるはずです。しかし、こと“日本人の女性”というところにフォーカスが当たりやすいのは、“少子化問題に起因する労働人口の減少”とその解決策の一つであるはずの“海外からの移民受け入れ”の否定という背景から来るものなのではないかなと思います。
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