ワークライフバランスの本当の意味

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武石恵美子氏の「働く人のワーク・ライフ・バランスを実現するための企業・職場の課題」によると、イギリスとドイツで正社員として働く人のうち、約7割以上が午後5時台に帰宅するという結果がでています。それに比べ、日本で午後5時台に帰宅する人は全体の約4割。いかに、残業が少ないかが分かりますよね。

(参照:1社に3年勤めたら「ナマケモノ」!? イギリス・ドイツとこうも違う、日本人が求める「未来の働き方」とは?

是非、上記記事を読んでいただきたいと思いますが、この記事を読んで皆さんはどういう感想を持たれるでしょうか。「羨ましい」と手放しでは言わないでいただきたい、というのが本日の記事の趣旨です。

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プライベートを充実させる、ということにだけ重きが置かれていないか?

ワーク・ライフ・バランスという言葉が一般的になって久しいですね。学生さんたちと会話をすると、企業を選ぶ基準の一つとしても、このワーク・ライフ・バランスという言葉が出てきます。このワーク・ライフ・バランスの意味、本当に分かって言っていますでしょうか。端的に言えば、短い時間で結果を出して、早く帰ってプライベートを充実させますということです。

…そう、意外と、短い時間で結果を出してという部分が抜けている人が多い印象を持っています。また、結果を出すということ一つ取っても、営業のように数字で表せるものであればまだしも、数字では中々表しづらい職種も存在する中で、何を以って結果が出たとするのか、というのが分からないところもあります。

企業も「結果」だけにフォーカスさせたくない理由がある

つまり、ワーク・ライフ・バランスというのは、“何を持って結果が出たとするのかが明確にされている(会社次第)”と“それを達成できる(本人次第)”という2つの条件が揃ってはじめて成り立つものになります。…当たり前だろうって?そうなのですが、意外と日本の会社は、「結果」というものを明確にしたがらない傾向があります。なぜか。

それは、明確にすればするほど、「結果」に結びつく以外の仕事をしないということにもなりかねないからです。企業運営をする上で、様々な職種の方がいらっしゃることはお分かりになるかと思います。しかし、それぞれの職種の仕事が必ずしも企業運営する上での必要な仕事を網羅できるかと言うと、難しいところがあります。例えば、オフィス内にごみが落ちていたというような時、「これは私の仕事じゃないから」と皆が思えば、オフィスはどんどん汚くなります。もちろん、それは清掃員の方を雇って、その方がやれば、という話ではあるものの、ごみ一つくらい拾って捨てれば済むことをしなくなる、というリスクはあるのです。このような、レフトセンター間のポテンヒットのような仕事は山ほどあります。そういったものを、「自分の結果とは関係ない、私の仕事ではない」と言い始めると、企業内がギスギスする、ということは想像に難くないのではないでしょうか。

正社員の制度とのトレードオフでも良いか?

実は、それが海外の企業では当たり前です。ただ、ギスギスしているかという点についてだけは、そうではないと思います。そう申しますのも、何が結果なのかということを明確にすることが、当たり前だからです。海外の企業は、日本の企業のように単一民族で構成されていません。バックグラウンドは多種多様であり、持っている価値観もバラバラ。そんな中で、相手の価値観一人ひとりを重んじて…なんていうことは残念ながらできず、結果というもので縛って、それをしっかりやる。やれなければクビ、という世界になっている訳です。つまり、日本の企業というのは、結果というものを明確にしない代わりに正社員という立場の人間に対しては、首を簡単に切れない制度になった、という背景があるのです。

ここまで来ればお分かりになるかと思いますが、ワーク・ライフ・バランスを求める、ということは、短時間で結果を出し続け、結果が出なければクビという世界で構わないと言っていることとニアリーイコールなのです。それが分かってワーク・ライフ・バランスを求めるかどうか、ということを改めて考えていただきたいのです。日本の企業がそういった方向に中々舵を切れない理由もそこにあります。事はそう単純にはいかない、という点を認識していただきたいところです。

P.S.
世の中で「ワーク・ライフ・バランス」を提唱している方って、例外なく仕事で結果が残せる方です。どう考えても結果が残せることが前提になります。全ての方が幸せになる制度ではないものだと思いますよ。

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キヨカワ

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