会社に不満があっても退職しない理由
2月9日付けの東洋経済オンラインで“日本人は世界一、自分の会社を嫌っている”という記事が上がっていました。その調査によると、Actively disengaged(積極的に繋がろうとしない=会社に反感を持っている)の割合が日本は1/3にも上るという(諸外国は大体その半分)。不満を持っている人は多いように思っていたが、“愛社精神”というような言葉もあるくらい一致団結することが日本企業の強みだったはずだったにもかかわらず、今、諸外国と比較してこれまでに多いのはなぜなのか。
不満をこぼせるのは働き手の“甘え”があるから
結論から言うと、これは一重に“働き手に甘え”があるからだと思っています。端的に言えば“クビにされる心配がほとんどない”からです。ご存知の通り、日本で正社員を“解雇する”ことは非常にハードルが高いもの。たとえ解雇されるにしても、それまでにどれだけ注意勧告を受けたかということの証拠等を企業側が提出しなくてはならないものになるので、余程大きな問題を起こさない限りは会社に居続けることができてしまうのが日本企業なわけです。
一方で、「明日、会社に自分の席がないかもしれない」という危機感を持たなくて済むことにはなるので、“安心して仕事に従事することができる”という大きなメリットがあります。その大きなメリットを守るために正社員という制度自体はしっかりと存続させていくことが大事、というのが正社員の制度を保持していきたい人の弁論になろうかとも思います。ただ、不満を持っている人が思っているのも、「明日、会社に自分の席がないわけがない」というものでしょう。諸外国では当たり前の“解雇”が当たり前でない日本。そこへの“甘え”に他なりません。
解雇規制の撤廃は難しくとも、緩和はすべきでは
だからと言って、簡単に「正社員の解雇規制の撤廃」ということも難しいことは分かります。先に述べた“安心して仕事に従事することができる”ということを脅かすことになるわけですから。ただ、重要なのはそのような“脅かす”ことがないことも今の“甘えた状況”を作り出していることは間違いありません。なので、安心して仕事に従事することができることを脅かす、ということを0か100かで考えるのではなく、ある程度の“脅かし”(規制の緩和)が必要になってきているのではないかという段階に来ているのではないかと考えます。
このような話をすると、「単に自分の会社を嫌っていることなら放っておけば良いのでは?」と考えられる方もいらっしゃるかもしれません。もちろん、それはそれで一つの方法かもしれません。そして、“その日暮らし的な発想”で言えば間違いなくその方がいいでしょう。ただ、長期的な視点で日本を見れば、ただでさえ人口が減り、市場が縮小していく日本においてそのような“働き手”を諸外国よりも多い状態で放置しておける程余裕があるようにはどうも思えません。
解雇規制は“その日暮らしの安心”しか与えていない
元々正社員の解雇規制は、高度成長時代に“負荷を働き手”に求める代わりに将来に渡る安定を“終身雇用”と“雇用規制”をセットにして提供していたものです。ご存知の通り高度成長はとうに終わり、失われた20年と言われている中で“終身雇用”という概念はほぼ有名無実化しました。そのような時代だからこそ「雇用規制だけは守ろう」とする動きがあるのだとは思いますが、それを守ることによってのメリットは“その日暮らし的な安心だけ”だったりします。そう、長期的な安心材料は何も提供してくれない世の中になっているわけです。
長期的な安心は、少なからず企業から“提供されるもの”ではなくなっています。長期的な安心の作り方は個々人が考え、作っていく必要のあるものになっているように感じます。不満をこぼしている時間があるならば、長期的にどうすれば安心できるかを個々人が考えていく必要のある時代になっているように思えてなりません。
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