在宅勤務の問題点 原因と解決策
「在宅勤務が普及しない理由は何だろう?」これだけITが発達し、かつてはできなかったかもしれない在宅勤務が今物理的にはできるようになっているはず。それにもかかわらず、在宅勤務は増えるどころか、減少傾向にあるようにも見える(参照:平成26年度テレワーク人口実態調査)。巷では女性の社会進出が叫ばれているが、在宅勤務がきちんと確立すれば女性の就業率は確実に上がるとは思うのですが。
“出勤している”=“働いている”、“出勤していない”=“働いていない”
在宅勤務が進まない理由を調べてみると、色々なことが言われています。まずは“コミュニケーション”上の問題。近くにいればすぐ問題が解決できることも、離れていれば難しくなるという話です。それに“セキュリティ”の問題。社外に情報を持ち出すことが情報セキュリティ的に問題になるという点ですね。そして、“サボる人間が出てくる”という問題。私もある種在宅勤務に近しい状況なので、そういう気持ちになることは非常によく分かります(笑)。あと、“在宅勤務ができない人からの嫉妬”。くだらない話のようですが、そんなことも実態としてあるようです。
このような状況を俯瞰的に見てみると、“出勤している”=“働いている”という意識でいる方(経営者、従業員共に)が多いということが見えてきます。“コミュニケーション”や“セキュリティ”の問題はもちろん業種・職種によってあるかもしれませんが、ほとんどの業種・職種において今のテクノロジーを持ってして解決出来ないことがあるとは思えませんし、出勤していることが目に見えるようなサボりはできないだろう(実際はサボっている人は多いと思うけれども)ということなんだろうなと。ただ、そのような意識の持ち方は経営者、従業員で少し違うので改めて解説していきます。
雇用しているのだから、出勤することは最低限の役務という考え
まず経営者について。経営者が“出勤している”=“働いている”という意識でいる理由は、「給料を払っているし、簡単に解雇もできないのだから、最低限出社しろよ」というものだと思います。「社員は時給で働いているわけではない。成果が出ているかが大事だ」とまともそうなことを言う方もいらっしゃいますが、「成果が出ていれば出勤しなくていい」と従業員に対して言える方は少ないはずです。一方で、何かプロにお願いする際には“成果”というものにコミットしてもらうだけで、出勤を強要することはありません。この従業員に対してとプロに対しての差は何か?と言うと、“解雇制限”だということに気付きます。
全ての仕事を“成果”にコミットしてくれるプロにお願いするのであれば、出勤という概念自体がなくなると思います。そして、その“成果”が達成できなければ、契約が打ち切られる。この至極当たり前のことがビジネス上は当たり前ではあるものの、こと企業と従業員という関係性になると“解雇制限”があるわけです。もちろん、従業員に安心して働いてもらうという非常に大きなメリットがあるからこそ存在する“解雇制限”ですが、この概念が存在するからこそ「従業員は出勤するのが当たり前」という考え方に繋がるし、だからこそ、副業を禁止しているところも多いように思えます。
働いている時間の分を給料として支払われるべきという意識
他方、従業員側も“出勤する”ということが少なからず“給料(お金)をもらう”という理由になっていると思います。もっと言えば、成果が出ようが出まいが、その“時間”出勤していたのだから給料(お金)をもらえるはずだと。残業代等でもめるのはこの意識の強さが如実に現れているからでしょう(誤解ないようにしていただきたいのは、残業代は支払われるべきですが、“成果”が前提です。タイムマネジメントを自分でできる環境がある人で残業代と言うのは能力が低いと言わざるを得ませんし、タイムマネジメントが自分でできない人は、それをマネジメントする上長の能力が低いと言わざるを得ません。ある程度能力があってもできない分の“残業代”こそ支払われるべきものでしょう)。
このように、経営者も従業員も、“出勤している”=“働いている”という意識がどうしても強いため、上述したような理由で在宅勤務を本気で進めていこうというような動きにならないわけです。
フリーランスで働ける人を増やしていくことが解決策では
では、どうしたらいいか。「成果が上げられる人だけ“解雇制限”を撤廃し、出勤しなくても良い状況を作ればいいんじゃないか」と考えたこともありました。実際にそれは一部動きとしてあると思います。それはそもそも企業に在籍するということではなく、自分自身がフリーランスになって仕事を取ってくるという動きです。ただ、それでは本来“在宅勤務”を必要とする大多数の方への解決策にはなっていないということにも気付きます。
ただ、そのようなフリーランスで仕事を取るということも一昔前と比較すれば環境が整備されてきているようにも感じます。ランサーズやクラウドワークスといったフリーランスとのビジネスマッチングを行うような場所ができてきているということがその代表例でしょう。ただ、それらの存在もまだまだ問題はあります。仕事を受注するフリーランス側の仕事のクオリティの問題もあるでしょうし、発注側も発注の方法が雑であったり、外注という発想がそもそもない方も多いと思います。しかし、これらの状況がもっと改善していけば、すべての方とは言わずとも、もう少し多くの方がフリーランスで活躍できる場が増えてくるのではないかとも思うのです。
“考える力”を身に付けることが自衛に繋がる
在宅勤務のような誰かの管理下になく働くということは、初め少し戸惑いますし、サボってしまうこともあります。しかし、そういった働く環境に慣れ、仕事ができるようになれば、サボればサボった分だけ自分に跳ね返ってくることも分かりますし、どうしたら自分がきちんとした成果をアウトプットできるようにできるだろうと考えるようになります。つまり、“出勤すれば良い”という正直レベルの低い段階から、“自分で考えて成果を出そう”というような意識に変わっていくことは間違いないのです。
もしかすると、この“考える”ということをしたくない人も多いかもしれませんし、“考えさせたくない”という企業側の思惑もあったりするのかもしれません。これからの時代を生き抜いていくためには、少なくとも“考える側”の人に入っておく必要はあるのではないかと感じます。後で「そんなこと聞いていない」というのは、それまで考えていなかった話に過ぎません。もう終身雇用の時代ではありません。自分の身は自分で守るための“考える力”をしっかりと身に付けていく必要があるのではないでしょうか。
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