朝令暮改が行き当たりばったりにならないために
“朝令暮改”という言葉があることは皆さんご存知のことと思います。朝言ったことが夕方には覆る、そのようなことを揶揄した言葉で、よく企業の社長がそのような傾向があるというような使い方をしますね(ともすると朝令暮改ならぬ朝令朝改なんていう言葉もあるようですが・笑)。このような朝令暮改をする社長さんを持つ現場の方々はよく振り回されます。そして、そのような社長に対して不満を漏らす…というようなことも珍しくないかもしれません。
これからの時代に“朝令暮改”は必須スキルの一つ
現場にとっては非常に迷惑がられるこの“朝令暮改”ですが、企業の経営者にとっては必須のスキルの一つだと思っています。ご存知の通り日本は成熟社会に入っており、社会のニーズが非常に多様化、複雑化しています。また、テクノロジーの進歩によりビジネスのスピードは格段に上がり、変化は年を追うごとに激しくなっているようにも思えます。そのような時代ですから、“変わる”ということが当たり前になり、そのような時代の変化に対応できなければ生き残れません。裏を返せば、変化がない=時代についていっていない可能性があり、それはそれで非常に危険な状況かもしれないということなのです。
ただ、この“朝令暮改”のあるべき姿と非常に似ていて非なる概念があります。それは、“行き当たりばったり”というものです。この“行き当たりばったり”と“朝令暮改”のあるべき姿というものは、表面的に見ると同じようなことをしているようにも見えます。そして、現場の方々が不満に思うのは、社長が“行き当たりばったり”で物事を決断しているのではないかという疑念から不満に繋がるということが多いように思います。確かに、“行き当たりばったり”の経営をされていたら従業員が不満、どころか、不安で仕方ないでしょう。
判断ごとに都合よく目的を使うことが“行き当たりばったり”になる
では、この“朝令暮改”のあるべき姿と“行き当たりばったり”の差とは一体何なのでしょうか。それは、企業における“最大の目的”が明確であり、その目的に沿った判断ができているかどうかです。ポイントとなるのは“最大”という言葉です。言い換えれば、その企業の最も達成したいことは何なのかということです。この目的以上に優先されるものはないという認識で判断ができるかどうかなのですが、“行き当たりばったり”でよく見られるケースが、判断を迫られるたびにそれ以外の目的を都合よく使い分けるような判断をしてしまうようなケース。これでは社長が何を考えているか分からないと言われて当然です。
企業によっては「社長の考えを従業員が知る必要はない」とする会社もあろうかとは思うのでこれ以上は言及しませんが、マネージャーとして何か判断する際にも、実は同じことが求められていると思っています。要するに、何か判断する上での最大の目的が明確であり、その目的に沿った判断ができているかどうかという点です。その判断軸が部下に落とし込まれれば、マネジメントの負荷はグッと下がります。むしろその判断軸を落とし込むことこそマネージャーの仕事と言っても過言ではないかもしれません。
繰り返しになりますが、“朝令暮改”はこれからの時代には絶対に必要なスキルです。ただ、それが“行き当たりばったり”にならないようにしないといけないことはもとより、そのように部下に“伝わってしまう”ことも問題です。最大の目的が何なのか、そしてその目的に沿った判断を下していき、それを部下へ落とし込んでいく。それが本当に必要な時代になってきているように感じます。
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