正論が受け入れられない理由
二人が睦まじくいるためには 愚かでいるほうがいい 立派すぎないほうがいい
立派すぎることは 長持ちしないことだと気付いているほうがいい
完璧をめざさないほうがいい 完璧なんて不自然なことだと うそぶいているほうがいい
二人のうちどちらかが ふざけているほうがいい ずっこけているほうがいい
互いに非難することがあっても 非難できる資格が自分にあったかどうか あとで疑わしくなるほうがいい
正しいことを言うときは 少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは 相手を傷つけやすいものだと 気付いているほうがいい
立派でありたいとか 正しくありたいとかいう 無理な緊張には 色目を使わず
ゆったり ゆたかに 光を浴びているほうがいい
健康で 風に吹かれながら 生きていることのなつかしさに ふと胸が熱くなる そんな日があってもいい
そして なぜ胸が熱くなるのか 黙っていても 二人にはわかるのであってほしい(「祝婚歌」吉野弘)
正しいこと(正論)を言うと、相手を傷つけやすい
この歌は、親から教えてもらって、親友の結婚式のスピーチでも話をした歌です。結婚すると色々ありますが、こういったことを念頭においておくと、良い関係が築けるなと心から思います。さて、今日この歌を紹介したのは、この内の一節である、
正しいことを言うときは 少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは 相手を傷つけやすいものだと 気付いているほうがいい
という部分。これは結婚生活だけに留まらず、社会人生活においても非常に重要な考え方だと思っています。具体的な事例を用いて話をしましょう:
ある社会人Aさんは、上司に対して不満を持っています。自分勝手で、部下に注意することを自分が出来ていない、そんな上司です。Aさんはしばらくそんな状況にも我慢してきましたが、同じように注意された際、ついに何かが切れてしまいました。「ふざけんな!」と(笑)。その後、Aさんはそれまで溜まった不満をぶちまけました。周りからすると、Aさんの言っていることは多くの人から見てその通りで、正しいと感じられるものでした。
そんなことがあった後、Aさんは上司の上司から呼び出され、その上司の上司から叱責を受けます。「全く納得がいかない」そんな気持ちでAさんはいっぱいになります。自分は正しいはずなのに、なぜ、それが分からないのか。
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こんな経験、ありませんかね?(笑)キヨカワも何度か似たような経験をしていて、胃をキリキリさせていたような気がしますが(笑)、やはりAさんは未熟と言わざるを得ません。
正しいこと(正論)を言う前に“言い方”と“持っていき方”を考える
それは冒頭の歌からも取れるように、正しいことを言うときは相手を傷つけやすいものというところに気付いていない部分がです。Aさんの主張は、多くの人にとって正しいのだと思います。ただ、その“言い方(ソフト面)”や、“持っていき方(ハード面)”が非常にまずかった、と言わざるを得ません。“言い方”というのは、上司に対して「ふざけんな」と言ってしまったり、感情的になってしまった点で、“持っていき方”というのは、上司にとっては何の前触れもなく今回の話を持ってきてしまった点です。きっと、この“言い方”と“持っていき方”を変えれば、Aさんにとっても、上司にとっても違う結果がもたらされたと思います。(具体的なHOWは、その組織によって違うと思うので、ここでは言及しませんが)
勘違いして欲しくないのは、組織に媚びへつらえということではありません。ただ、そうは言っても、会社にサラリーマンとして属しているのであれば、その企業があることによって、給与がもらえているという事実だけは外してはならないと思います。権利には必ず義務も伴います。そこを忘れないでいたいですね。
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