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「残業代は月給に含まれているようで出ないんです」このような話をよく聞きます。残業をしても残業代が出ない、いわゆる“サービス残業”と呼ばれるものですが、残業代周辺の知識をしっかり持っていない方も多いようです。

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残業代が月給に含まれているカラクリ

まずはじめに知っておいていただきたいのは、残業代が月給に含まれているというカラクリについてです。大原則として労働基準法では、法定労働時間(1日8時間、週40時間)以上働かせることは法律違反になります。とはいえ、それは現実的ではない側面もあるので36(サブロク)協定という名の書面を社員代表と締結し労働局に提出すると、一定時間の残業を社員に課すことができるという仕組みです。

一定時間の残業時間とは、よく使われるのが1ヶ月45時間というもの。詳しくは他のサイトの解説をご覧いただければと思いますが、1年に渡ってだと360時間以内に抑えなくてはならないなど、厳密に言うと細かなルールがあります。ただ、私が見る限り、この45時間という時間を根拠として月給を算出している企業が多いように思えます。具体的な例でお話しすると、月給が20万円の方がいるとしましょう。その方の月給の内訳として(1日8時間、月21日勤務とした場合)、“基本給15万円、職務(もしくは類似の名称)手当5万円”というようになっているのではないかと思います。この職務(もしくは類似の名称)手当という部分が含まれている残業代に当たります。

どのような計算になっているかと言うと、15万円÷8時間÷21日=892.85…というのがその方の“時間給”となり、残業については通常の残業の場合(深夜や定休日ではない場合)、1.25倍になります。つまり、時間給×1.25倍=1,116円が残業した際の時間給になります。そして、先にお話したとおり、45時間というのが36協定上最大で残業して良い時間となりますので、1,116円×45時間=50,223円となります。左記が最大で残業した際に支払える残業代ですから、これを超えないようにしなくてはなりません。そこでキリの良い数字である5万円という数字を取り、15万円+5万円で44.8時間の残業代を含め働いてもらっている、というような仕組みになっているのです。

弁護士が残業代未払い問題を利息の過払い請求の次に見据えている理由

これらの事実をしっかりと押さえた上で考えると、多くの企業で突っ込みどころが出てきます。例えば深夜(22時以降)働いた場合、時間給×1.35倍になります。なので、1ヶ月45時間以内の残業だとしても、その中に深夜働いた分が入っていると、上記の計算に合わない可能性が出てきます(定休日についてもそうなのですが、これは土日というような意味合いではなく、週に1日でも休みがあれば該当しなくなるので一旦割愛します)。もっと言えば、1ヶ月45時間以上の労働については変形労働時間制の例外を除き、その分の残業代を払わないことはもとより、働かせることそのものが法律違反ではあるのです。タイムカードで残業時間を45時間以内に調整するというようなことがあるのは、このような背景からとなります。

なので、もしあなたが残業代の未払い請求を企業にしたいと思うのであれば、自分自身が何時から何時まで働いたのかということをきちんと記録して、証拠として提出すれば、その分の残業代(最大2年間分)を請求することそのものは可能なのです。このような事実があるため、きちんと労働時間を守っていなかったり、残業代を支払っていない企業は訴えられたらまず勝てないと思いますし、弁護士が”利息の過払い請求”の次に狙っている市場とも言われる所以になっています。

知識を知ることは重要だが、乱用を推奨しているわけではない

このような知識をしっかりと持っておくということはこれからの世の中を渡り歩いていく中で非常に重要ではあると思います。ただ、勘違いしないでいただきたいのは、このような知識を持って乱用してくださいということではないという点です。

ここから先は私個人としての意見となりますが、これらの知識を持って仮に企業を訴えるというのは本当に“最終手段”なのではないかと思います。その“最終手段”を使う権利はもちろんありますが、それを使った後をどう考えるかです。そのような形で一時的に金銭を得ることはできるかもしれません。しかし、そういったことに味を占め、そのような形でしかお金を得ていけないような人になってしまうことだけは避けるべきではないでしょうか。

もっと言えば、残業したからお金がもらえるのが当然と思うのは自分自身の無能さを露呈しているのと同義のような気もします。もちろん繁忙期等があり、一時的に忙しい状況になることもあろうかと思いますが、自分で自分のタスクコントロールができていない、もしくはそのタスクコントロールを上司に任せてしまっている(それが当たり前と思っている)ということなのでしょう。その程度の能力の人というように私は思われたくない、というのが根幹にあるのかもしれません。

まとめ

まとめると、法律的には残業代を払わないというのはあり得ません。ただ、その残業代の権利を主張するかどうかは一度立ち止まって考えても良いことのように思えます(もちろん、管理職という立場であれば、この事実を知っておくことは絶対ですし、法律を遵守するよう努力することは必須です)。問題をなあなあにしたいわけではありませんが、もし仕事ができる人になりたいと考える方なのであれば、このことについては触れない方が良いことのように思える今日この頃です。

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キヨカワ

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