メルカリのmerci box(メルシーボックス)について思うこと

公開日: : 最終更新日:2016/02/26 2.組織人として生きるために


フリマアプリを運営するメルカリが産休・育休あわせて約8ヶ月分の給与を100%保障する「merci box(メルシーボックス)」という人事制度を2月頭に発表していました。一見良さそうな人事制度のように思われますが、この人事制度があるから良い、悪いと判断するのは時期尚早な気がしてなりません。

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前提となる健康保険の知識を知ろう

この話を紐解いていく上で、前提となる健康保険の知識をおさらいしていきましょう。その前提を押さえる理由は、産休・育休を取得するに当たり、かなりの部分が健康保険がカバーしているからです。まずきちんと分けて考えなくてはならないのは、産休は産前4週間、産後6週間のお休み、そして、育休というのは産後6週間が経過した次の日から最長1年6ヶ月(生後半年経過後の直近の3月末まで)という区分があるという点です(産休・育休とまとめられがちではありますが、それぞれ意味合いが異なるため、きちんと分けておく必要があります)。

企業は、出産を控える従業員を出産予定日の4週間以降働かせてはなりません。ただ、その産休中の給与というものまで企業に負担を求めてはいません(無給休暇の申請が可能であるということ)。なので、この点についてはメルカリさんが全面的に保障するという話になっているわけですね。ただ、その後育休を取得する際には、給与の標準月額金額(ざっくり言うと、月給+交通費)×2/3の金額を育休の期間中、健康保険から出るわけです(同企業で1年以上勤務していた場合)。ここについての言及はニュースリリース内にはないのでなんとも言えませんが、半年間分2/3は健康保険から出るので、1/3の給与は企業が負担しますよという意味合いのようにも思えます。なので、メルカリ自体が負担するのは、産前産後期間中の2ヶ月+育休期間中の1/3×6ヶ月=4か月分の給与保障をしますよ、という話になります。

誤解しないでいただきたいのは、この制度が大したことないということを言いたいわけではありません。出産の度に4か月分の給与を働いていない従業員に対して支払うというものなのですから、これは企業にとって非常に大きなことではあります。とはいえ、必要以上にすごいことだと捉える必要もないという事実もきちんと認識されるべきだということがこの知識をきちんとシェアした意図ではあります。

最大の問題はこの制度が存続できるかどうか

「じゃあ、良いことなんじゃないか」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そう判断するのは冒頭で申し上げたとおり、“時期尚早”です。確かに制度としては“良いもの”であることは間違いありません。問題となるのは、この制度そのものが“存続できるかどうか”だと思います。

まず注目すべきは、メルカリという会社自体が創業間もない企業であることや、従業員の方もまだ若い方が多い点です。実際に従業員がこの制度をがっつり利用するようになった場合に、本当に制度が機能し続けられるのかというところがまずは一つの大きなポイントとなると考えられます。特に、今は上り調子で利益が上がっていっているところですので、この利益の伸びが鈍化したり、従業員が増えてきたりした時にボディブローのように効いてきてしまう可能性があるわけです。

また、これは育休の育児休業給付金にも同じことが言えますが、同給付金を受け取りながら、復帰直前に“退職する”という問題が出てくる点です。ある意味“不正受給”のようにも感じられるところではありますが、出産前には「絶対に復帰します!」と本気で思っていた方も、出産⇒育児という経験をすることで、「やはり育児に専念したい」と考える方も多くいます。そのような方に対しても支払いをしていくことにならざるを得ないので、企業側は負担をするだけして、バイバイということも可能性としては考えられるわけです。

広報的な意味合いが強いと勘ぐらせる人事制度

これらの状況を考えると、メルカリとして“今”はその制度を作って成り立たせることができるけれども、将来この制度が存続できるかは非常に不透明と言わざるを得ないと思います。それにもかかわらず、このようにメディアで大々的に発表している理由は、“広報的な意味合いが強いのでは?”とどうしても勘ぐってしまいます。

“広報的な意味合い”とは、要するに“ブランディング”と人材募集”です。女性がメインユーザーとなっているメルカリを運営しているからこそ、「女性に優しい会社ですよ」と大々的に発表することにより、より多くの女性ユーザーを増やしたいというブランディングの意図はあるのでしょう。また、成長している企業だからこそ、人が足りていないのでしょう。人を確保していく上で、非常に強い武器になり得る話であることも間違いありません。それらの意味合いと企業側が負担する金額とが折り合った状況を作れるだろうと判断した上で、このような人事制度を大々的に発表するに至ったと見ています。

企業と働く人、権利を主張するだけでなく、義務を果たす必要がある

何度も申し上げますが、別にこの制度そのものは悪いものではありません。大事なのは、この制度自体が存続するかどうかは分からないという点です。なので、結婚がまだ先で、いつこの制度を利用するか分からない人は、その制度自体が将来ないかもしれないし、結婚したてで、この制度を利用するために転職してくるような人はそうそう採用されないでしょうということは暗黙知としてあるということは覚えておいた方が良いように思えます。

この手の問題は本当にセンシティブな問題です。実際には産休・育休中の問題よりも復帰後の方が大きな問題になりがちです。その復帰後にフォーカスしてもらった方が本当は良いはずなのですが、そちらに言及されていないところも“広報的な意味合い”のように思えます。とはいえ、企業もそこで働く人もどっちもどっちではあるので、お互いに権利を主張するだけではなく、お互いに義務をしっかり果たしていく必要があるように思えます。

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