2016年1月から5月までの世界経済を振り返る 後編

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2016年1月から5月までの世界経済を振り返るシリーズ?も本日で最後です。最後の記事は“振り返る”というよりも、この先どうなるのかということを考えていきたいと思います。もちろん、未来のことなのでどうなるかということは分かるわけはないのですが、どのようなことになりえる“可能性がある”ということを見出しておくことは大事なのではないかなと思います。それでは早速参りましょう。

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パナマ文書が世界経済に与える本当の意味とは

今、個人的に最も気になっているものが直近様々なメディアを賑わした“パナマ文書”です。パナマ文書を簡単に説明すると、パナマのオフショア法律事務所で管理していた情報(意図的に税金を優遇しているタックスヘイブン:租税回避地に資産を持っていた顧客リスト等)が流出してしまったという話です。日本人も楽天の三木谷社長だったり、セコム創業者の飯田氏なども入っていたようですが、イギリスのキャメロン首相などの名前も入っており、世界的に大きな影響を与えた文書として今注目を集めています。

誰がそういうことをやっていたのかというようなゴシップ的な側面には全く興味がないのですが、そもそもなぜこのような文書がなぜ公になってしまったのか。表向きには法律事務所への国外からのハッキングし、それがドイツ新聞をはじめとした世界のメディアへリークされたとなっているわけですが、そもそも誰が何の意図でこのようなことをしたのか…ということに対する仮説が、これからの世界経済に大きな影響を与える可能性が出てきている話があるのです。

アメリカがOECDの共有報告基準にサインしていない事実

結論から申し上げると、この“パナマ文書”が流出したのはアメリカによるもので、その結果アメリカに資金を集中させる環境を作ろうとしているのではないかという話です。順を追って説明すると、まず前提として世界はタックスヘイブンをなくそうとしているということです。アメリカでは“FACTA”という国内の法律によって、アメリカ人が海外に資産を持っている場合にはアメリカの国税庁に報告するようになっています。OECDはこれに倣って“共有報告基準”というものを作り、お互いの国でそのようなことがあった場合にはお互いに報告し合おうというものができました。

タックスヘイブンをなくそうとする動きとしては問題がなさそうに思えますが、問題はここからです。アメリカはこのOECDの作った基準にはサインしていないのです。これがどういった意味をなすかと言うと、アメリカは一方的に他の国に対してアメリカ人の資産を確認できるにもかかわらず、他の国々はアメリカへの確認ができない状況を作っているということになります。つまり、アメリカ人以外の人々がアメリカに資産を持っていても、アメリカに確認を入れることができないわけです。

アメリカは世界からお金を集めるためにアメリカ外のタックスヘイブンを潰す

アメリカに資産を持つメリットはどこまであるのかというように思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実はアメリカにもタックスヘイブンがあります。マーシャル諸島のような島国がタックスヘイブンのような印象がありますが、アメリカではデラウェア州をはじめとした極端に税率の低い州が存在し、そこがタックスヘイブンとなっている事実があります。つまり、それらの場所に資産を移すことで、自国からの干渉を受けることなく租税回避できる状況を作っているというわけです。

そして今回のパナマ文書によって発信されたメッセージは、「租税回避を根絶しよう」というものでしょう。この流れが加速すればするほど、アメリカ以外のOECDの基準にサインした国にかかわるタックスヘイブンは潰され、アメリカのタックスヘイブンだけがその流れから回避されることになります。そしてここからは完全なる仮説ですが、今年アメリカ市場が一人勝ちしていて、他の国の株価が下がるタイミングでもさほど影響を受けなかったことはここにあるのではないかということです。

アメリカ一人勝ちの状況がもし続くとしたら…

今年は大統領選挙があり、一般的には株価が上がる年ではあります。ただ、単純にチャートを見る限りはどの国も下落基調であるように思えます。このような中、アメリカ以外の国は下落しながらも、アメリカだけが一人勝ちしていく状況が続くということならば、パナマ文書及びそれに付随する様々な事柄の存在をどうしても意識することになるのではないかと思うわけです。

というわけで、具体的に株価がどうなるかというような話ではありませんが、今後の株価を見ていく上で影響力の強い要素になり得る話を紹介させていただきました。当然、昨日紹介した5つの事柄が今年については大きな影響を与えることになることは間違いありませんので、それらに関するニュースは確実にフォローしていくべきです。そして、それらを踏まえてもアメリカ市場が強い状況が続くということがあれば…今日の記事を思い出してもらえると良いのではないかなと思います。

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キヨカワ

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