転職理由の嘘と本音
転職理由・退職理由を聞かれるのが困る…転職の面接でそれらを聞かれた際、答え方に困る方は多いのではないでしょうか。「前向きな理由を伝えれば大丈夫」なんていう無責任なアドバイスをする方が多いですが、100%前向きな転職・退職というものはあり得ないことは面接官も分かっていると思います。今日は転職理由・退職理由についてどこまで何を言うべきかを考えていきたいと思います。
転職理由・退職理由はどこまで何を言うべきか
転職・退職の種類は、大きく分けて2つ。1つは転職する本人都合による転職・退職と、もう1つは本人都合ではない転職・退職です。前者は本人の意思によって転職・退職するわけですから分かりやすいと思いますが、後者というのはどういうものかと言うと、理由が「親の介護」であったり、「配偶者の転勤」といったそんな場合です。
普通に考えると後者は本人にとっては“不可抗力”な出来事であるので、面接官に「それは仕方ないね」と思ってもらえることも多いのですが、そこを分かって嘘をついてくる求職者の方も中にはいらっしゃるので、後者を言えば良いというものではないことは覚えておいてください。また、前者であってもきちんとした“伝え方”が大事で、前者だからダメという話ではありまえせん。
それぞれのケースにおいて、具体的にどこまで何を言うべきかを考えてきましょう。
★コラム★「親の病気が理由で転職回数が多いをどう見るか」
20代にもかかわらず転職回数が4回、ほとんどが1年前後で仕事を辞めているという方と面接をしたことがあります。それぞれの転職理由は、親の病気が良くなったり悪くなったりしてその都度転職をしているとのこと。そして、今回はようやく親の病気の目処が立ったので、きちんとフルタイムで働ける仕事に就きたく応募してきたとのことだったのですが…。
彼が嘘を付いているかどうかということは正直分かりません。そしてそれが本当のことであれば、個人的な感情としては同情してしまうところでもあります。ただ、面接官としては100%それを信じることもできず、ジョブホッパーなのではないかという疑いを同時に持ってしまうことも実情です。家族のことなので面接官も突っ込んで聞くことが中々難しい分野でもありますし、それを分かって話してくる求職者こそ、入社してからトラブルを起こす可能性が高い人材ではあるので、疑わしきは罰せずではないですが、疑わしきは内定出さずというような方向で決着させることになります。
もちろん、それを圧してでも採用したい人材であればまた別かもしれませんが…そのような人材であれば尚更言うべき話ではないかもしれません。
ほとんどの転職理由・退職理由は「人間関係」に帰結する
さて、まずは前者である本人都合による転職理由・退職理由についてです。本人都合の退職理由・転職理由の本音として、「会社の将来性が不安だ」「今の仕事にやりがいがない」「給与に不満」などがよく挙げられています。しかし、これらを更に深堀りしてみると、ほとんどのケースが「人間関係」に落ち着きます。人間というのは基本的には居心地の良い環境にいたいと思うものですから、たとえ将来が大変になると分かっていても、その居心地の良さから脱するという行動にまでは繋がらないことがほとんどです(もし行動ができる方ならば日本から脱出くらいしているのではないでしょうか?笑)。要するに、「会社の将来性~」と言いつつも、会社内の人間関係が上手くいっていれば退職しようという動機には繋がらないのです。
翻って、このような「人間関係」が本音の理由で退職・転職しようと考えた場合、それを正直に伝えるべきかという点についてです。恐らく多くの方は答えを「NO」とされるのではないでしょうか。それが言いづらいからこそ、他の体の良い転職理由・退職理由を何となく考えて言う、というのが多くの方がやっていることなのではないかなと推察します。
転職理由で「人間関係」を挙げて本当にダメなのか
改めて、「人間関係」を転職理由・退職理由で言ってはならないのでしょうか。結論から言えば、そんなことはないと私は思っています。ただ条件があります。その条件とは、「その人間関係を改善しようと努力した形跡を示せるかどうか」という点です。
どんな会社に入ろうとも「人間関係」で全く悩まないことはそうないでしょう。前の会社で「人間関係」で悩んだということは、次の会社でも同じ「人間関係」で悩む可能性は大いにあり得ます。なぜ、「人間関係」で悩むのかということを自分なりに原因を突き止め、それを解決しようとする姿勢があったかどうか。この姿勢及びその後の行動がきちんとあって、それ以上は自分ではどうにもできず、転職・退職という結論に至ったというのであれば納得感はあります(ただ、その行動レベルが面接官の納得するものでなくてはなりませんが)。
実はこの話は「人間関係」に限らず、他の転職理由であっても同じことが言えるのです。
問題に対して解決しようとする姿勢と行動が必要
「会社の将来性が不安」「給与が低い」「他の職種に就きたい」などが本音で多い転職理由・退職理由だというお話をしました。恐らく、これらの理由を今の職場で努力することを諦めた際に思うことなのではないかと思います。もちろん、それまでに十分努力してきたという方もいらっしゃるでしょう。それならば、その努力をどれだけしてきたのかということを素直に面接官にぶつければいいわけです。ただ、多くの方はそれができません。なぜなら、語れるほどの努力をしていないからです。転職理由・退職理由に困るということは、自分で“転職”という選択が“逃げ”と認識していることに他なりません。
ただ、“逃げ”による転職が絶対悪かというと、そうではありません。やはり身体を壊してまで続けるべき仕事はないですし、何より大事なのは継続的に働き続けられる状態を保つということかと思います。ただ、その点についてずっと目を逸らしたままでは、同じ問題に必ずどこかでぶつかることになる可能性は非常に高いのです。そして、そういった問題は若い頃に解決する方が解決が容易であり、年を取れば取るほど難しくなるというのも事実です。
転職が本人による意思によるものの場合は、そのような自分自身の課題に気付き、解決しようとできるかという姿勢と行動に気付くことのできる機会であることは間違いありません。
不可抗力の理由でも同じことが求められている
また、もう一つの本人都合でない転職理由・退職理由についてですが、実はこちらも同じことが言えます。ある意味、自分ではコントロールできない、不可抗力の出来事が起こった際にどれだけあなた自身がこのことに対して真剣に考え、そしてどんな結論を出したのかということを聞きたいと思っています。
「親の介護があるから」というのが転職理由・退職理由の場合、同じ「親の介護があるから」でその会社も退職する可能性を感じます。つまり、そこにご本人の意思が感じられないわけです。「親の介護があるので仕方なく」というのは非常に簡単です。あなた自身がどの程度の覚悟を持ってその決断をしているのかということが全く伝わってこないわけです。
本当に自分自身の努力して何とかなる範囲はなかったのか。その範囲で努力をしたのか。それでもどうしようもなくその結論に至るしかなかった、というような話がきちんとできるかどうかなのではないかと思うのです。
まとめ
まとめとして、転職理由・退職理由をどこまで本音で言うかについて、本音でも言って大丈夫なくらい努力してみたかどうかというところを振り返って欲しいということになります。それは面接対策的な側面もありますが、何より将来のご自身のためにです。転職によって問題が解決されるケースもないことはありませんが、その時点で解決しなかった問題は将来また大きな形で返ってくることは非常に多くあります。
その問題を解決する機会と捉えられるかどうか。ということが転職の際には求められているのではないかと感じます。
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